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待ったをかける歌舞伎役者

市場を調べて、自分だけの案を持とう

説明会のモデル年収は本部が作った数字です。自分の町の数字は、自分で出せます。

自分の商圏に何世帯あって、そのうち何件が客になり得るのか。競合は何社いるのか。 単価はいくらで、月に何件こなせば食べていけるのか。これを加入する前に、自分で計算しましょう。

たぬきの皮算用でいいので、数字にしてみる

私の場合はこうです。

市内の戸数約8万
買う予定のある世代50〜70代
その層の世帯収入年金が主体。月20万円程度がほとんど
だから狙う層オリジナルの商品を使い、所得の多い層
集客の方法ネット集客(AIの利用料 月2万円程度)
その結果の平均客単価8万円
毎月の支払い22万円(うちAIの利用料2万円)
ほしい手取り20万円
必要な利益42万円
経常利益率60%
必要な最低売上高42万円 ÷ 0.6 = 70万円
必要な件数70万円 ÷ 8万円 ≒ 月9件

月に9件。ここまで出して、はじめて「その9件をどこから取るのか」という話ができます。 9件なら知り合いと紹介で足りるのか、チラシが要るのか。数字が出ていなければ、その判断もできません。

本部の言うとおりに始めた場合と比べてみる

比べるために、もう一つの計画を私の計画と横に並べます。開業資金を借りて、安さで広く集めるチラシを本部の言うとおりに撒いて始めた場合のモデルです。 町の条件は私の場合と同じにしています。モデルは実在の店の数字ではありません。

項目私の計画モデル
市内の戸数約8万約8万(同じ)
買う予定のある世代50〜70代50〜70代(同じ)
その層の世帯収入年金が主体。月20万円程度がほとんど同じ
だから狙う層オリジナルの商品を使い、所得の多い層市場を調べず、本部のチラシで広く、安さで集める
集客の方法ネット集客(AIの利用料 月2万円程度)チラシ 毎月4万枚程度(印刷と折込で1枚6円、月約24万円)
その結果の平均客単価8万円2万5,000円
毎月の支払い22万円
うちAIの利用料2万円
60万円
うちチラシ代24万円
ほしい手取り20万円20万円
必要な利益42万円80万円
経常利益率60%30%
必要な最低売上高42万円 ÷ 0.6 = 70万円80万円 ÷ 0.3 ≒ 267万円
必要な件数70万円 ÷ 8万円 ≒ 月9件267万円 ÷ 2万5,000円 ≒ 月107件
1日あたりの見積もり件数
月20日稼働・見積もりが全部注文になる前提
9件 ÷ 20日 ≒ 1日0.45件
2日に1件ほど
107件 ÷ 20日 ≒ 1日5.35件

月9件と、月107件。ほしい手取りはどちらも同じ20万円です。集客にかけるお金は、月2万円と月24万円です。 同じフランチャイズでも、10年やってきた人と始めたばかりの人とでは、計画の立て方でこれだけの差がつきます。

私は創業前に必死で勉強して、事業資金や広告費を極力抑えるように計画を練りました。 借りる額が小さければ毎月の支払いが小さくなり、必要な件数も小さくなります。

一方で、きちんとした計画を練らずに本部の言うままに始めると、このモデルのように、毎月の支払いに追われる形になりやすくなります。 この形から立て直す道は、粗利率を上げることと、毎月の支払いを減らすことの2つに絞られます。 同じ60万円の支払いと20万円の手取りでも、経常利益率を60%にできれば、必要な売上高は約133万円。半分で済みます。

同じフランチャイズでも、これだけ粗利益率や経常利益率が違うのですから、 経営者の手腕がものを言う世界であるのは間違いないと思います。

粗利益率を上げるには、独自の付加価値を商品に与えて単価を上げたり、自分の店でしか扱っていない商品を加えたりして、独自性を売りにするのが一番良いと思います。 その考え方は値段以外で選ばれる理由を用意しようの章にも書いています。

たぬきの皮算用でかまいません。やっておくことが必要です。 目標の客単価や売上高は、あとからそうなるように改善していけばいいのです。

説明会ではモデル年収とモデル件数が出てきます。あれは本部が作った数字であって、 自分の町の数字ではありません。

そして、その数字は平均ではありません。うまくいっている店の数字です。 「平均月収」と書いてあっても、何店の平均なのか、辞めた店が分母に入っているのかは書いてありません。 見せられるのは、いちばん成績の良いほうです。悪いほうは資料に載りません。

本部の募集ページに載っているモデルを、原価の率だけ現場の感覚に置き換えて計算し直してみると、手元に残る額は2割ほど減りました。 本部が募集で示すモデルは、かなり上位の店の数字です。

例えば10年選手の私が、同じフランチャイズを1からやり直したら、モデルケース並みの成績を出せるかもしれません。 でも、独立して間もない方がモデルケースに近い数字を出すのは、ほぼ不可能です。

本部に任せきりにせず、まず自分で考えて、事業計画を立てる。 それができないまま加入しても、開業した後に誰かが代わりに考えてくれるわけではありません。

また、ビジネスの世界は魑魅魍魎の巣食う怖い世界でもあるのです。 フランチャイズだから安心、などということは一切ありません。

裁判になっているのは、契約前に本部が出した売上予測です

加盟店と本部の争いで判決が残っているものを見ると、争点はロイヤリティでもエリアでもなく、 契約前に本部が示した売上・客数・利益の予測に集まっています。

説明会で渡された数字は、後から争う材料になる程度には重いものだということです。 もらった資料は捨てずに取っておいてください。そのうえで、その数字の根拠を聞いてください。

チェーン名は伏せています。内容は公開されている裁判例の紹介にもとづきます。