毎週保存した店舗一覧から数えた実測です。一番きびしいチェーンは1年で4店に1店以上が消えています。
先に数字を出します。10つのチェーンの店舗一覧を毎週保存し、消えた店を数えて1年に直したものです。 本部が公表する店舗数ではありません。これは、フランチャイズの閉店率を自分で数えた実測値です。
| チェーン | 業種 | 年間閉店率 |
|---|---|---|
| A社 | 住宅まわりのサービス | 9.7% |
| B社 | 高齢者向けの生活支援 | 21.6% |
| C社 | ハウスクリーニング | 13.9% |
| D社参考値 | 生活便利サービス | 10.1% |
| E社参考値 | 介護向けリフォーム | 14.1% |
| F社 | リユース・買取 | 9.6% |
| G社 | 高齢者向けの配食 | 7.0% |
| H社 | リユース・買取 | 27.9% |
| I社 | 訪問マッサージ | 11.9% |
| J社 | ハウスクリーニング | 9.4% |
期間は監視を始めた日(2026-04-29・2026-09-12・2026-09-13)から 2026-10-26 まで。前の週に載っていた店が翌週に消えていれば1件と数えます。 ただし同じ店名が後の週に再び載ったものは「看板の付け替え」として除外しています。 年間閉店率=実閉店 ÷ 平均店舗数 ÷ 監視期間(年)。いま載っている店のうち、1年でどれだけが消える計算になるかです。 監視は約6か月と短いため、この換算値は振れます。 「参考値」は取得数が本部の公表を下回っているチェーンです。
きびしいところでは、1年のうちに4店に1店以上が消えています。 一番ゆるやかなところでも、14店に1店近くが消えています。
店舗数だけを見ていても、辞めた人は見えません。 A社の4か月あまりを、月ごとに並べてみます。
| 月 | 新しく載った店 | 消えた店 | 月末の掲載数 |
|---|---|---|---|
| 5月 | 1 | 4 | 356 |
| 6月 | 3 | 2 | 357 |
| 7月 | 2 | 3 | 356 |
| 8月 | 2 | 2 | 356 |
| 9月(7日まで) | 0 | 0 | 356 |
| 合計 | 8 | 11 | 359 → 356 |
掲載数は359店から356店。ほとんど動いていません。 募集資料に「およそ350店」と書いても、嘘にはなりません。
ところが同じ4か月あまりで、11店が消えて、8店が入っています。 店舗数が変わらないのは、辞めた人と同じだけ新しい人が入っているからです。 店舗数という1つの数字は、この入れ替わりをきれいに隠します。
増えているチェーンでも、同じことが起きています。C社を同じように並べます。
| 月 | 新しく載った店 | 消えた店 | 月末の掲載数 |
|---|---|---|---|
| 5月 | 28 | 19 | 1,759 |
| 6月 | 48 | 25 | 1,777 |
| 7月 | 28 | 22 | 1,785 |
| 8月 | 23 | 23 | 1,788 |
| 9月(7日まで) | 4 | 9 | 1,785 |
| 合計 | 131 | 98 | 1,752 → 1,785 |
こちらは33店増えています。募集資料には「店舗数は増え続けています」と書けます。
ところがその裏で、98店が消えています。 131店が新しく入り、98店が辞めた。その差の33店だけが、表に出る数字です。
増えているから安全、ということにはなりません。 規模が大きいチェーンほど、入れ替わりの量も大きくなります。
見るべきなのは今いる数ではなく、消えた数です。 そして消えた数は、どの募集資料にも載っていません。
辞めた店の数は、日本の法律でもまったく扱われていないわけではありません。 中小小売商業振興法の施行規則は、開示の書面に「直近の三事業年度における加盟者の店舗の数の推移」を書くよう定めています。 書くのは、各年度末の店舗数、新しく営業を始めた店舗数、契約が解除された店舗数、更新された店舗数と更新されなかった店舗数です。
出典:中小小売商業振興法施行規則 第10条第6号・第11条(e-Gov法令検索)
ただし、この書面には限界が2つあります。 1つは、契約書の章で書いたとおり、作業や役務だけを提供する本部は対象に入っていないことです。 もう1つは、書面を受け取るのが加盟しようとする本人だけで、外には公開されないことです。 そのため日本では、業種ごとの閉業率を誰も計算できません。
アメリカでは、本部が加盟希望者に渡す開示書類(FDD)に、直近3年間に開いた店、契約を解除した店、更新しなかった店、営業をやめた店の数を書く欄があります。 州の当局に提出されたこの書類を集めて数えた調査があり、業種ごとの1年間の閉業率が分かります。
| 分野 | 調べたチェーン数 | 1年間の閉業率(真ん中の値) |
|---|---|---|
| 全体 | 858 | 4.7% |
| 住まいのサービス | 119 | 6.7% |
| 飲食 | 198 | 3.8% |
| 美容・健康 | 42 | 2.5% |
出典:米国連邦取引委員会のフランチャイズ規則(16 CFR Part 436)、VetMyFranchise「Franchise Failure Rates 2026」。加盟店25店以上のチェーンの、2025〜2026年に提出された開示書類を集計したもので、本部が買い戻した店は閉業に数えていません。上位1割のチェーンは、1年で16.2%以上が閉業しています。
この数字は、このページの実測と同じ物差しではありません。このページは掲載から消えた店を数え、アメリカの数字は本部が書類に書いた閉業を数えています。 それでもアメリカでは、加盟を考える人が、業種ごとの閉業率を比べてから選べます。
日本でも、アメリカのように閉業率を出せるようにする必要があります。 役務だけの本部も開示の対象に入れること、そして集計した数字を公開することです。 それまでは、このページのように店舗一覧を自分で数えるしかありません。
業種ごとの今の動きは、フランチャイズ業界の今に毎週まとめています。
創業のときは、誰でも気持ちが先に走ります。 独立の話は、うまくいった人の話ばかりが集まります。うまくいかなかった人は黙って辞めるので、 話が出てきません。その結果、見える景色は実際より明るくなります。
ここまで公開情報の集計を書いてきましたが、私自身が見てきたことも残しておきます。
加盟したときの研修で、同じ時期に始める仲間と一緒になりました。 そのうちの1人は、結局開業していません。本部を相手に裁判を起こしました。 残りの人たちも、数年のうちに倒産か廃業で辞めていきました。いま続けているのは私だけです。
私より後に同じチェーンへ加盟した人たちも、その多くが数年で辞めています。
これは統計ではありません。加盟店として見聞きした範囲の話です。 ただ、辞めた人は自分からは話しません。だから、こうした話は外からは見えません。 募集資料にも、説明会にも出てきません。
創業の前後は、アドレナリンがたくさん出ています。何でもできる気がします。 実際、始めてから数か月は、絶対に成功すると思えるでしょう。
ところが、売上は思ったほど上がりません。そして営業をやったことがない人がほとんどです。 売上を上げるために何をすればいいのか分からない。だから本部に指導をお願いします。 返ってくる答えは、だいたい決まっています。
チラシを出してください。
今は我慢のときです。
チラシを出し続ければ、うまくいくはずです。
現実はそんなに甘くありません。
チラシに本当にいくらかかって、何件取れば元が取れるのか。 その計算は自分の客は、自分で集めようの章でしています。 先に結論だけ言うと、反響率が上がらない限り、チラシを続けるほど穴は深くなります。
ビジネスを始めようと意気込んでいるときには理解が難しいかもしれませんが、 全てがうまくいくことは絶対にありません。 私たちにはコントロールできないことが、世の中にはたくさんあります。 これは、たった10年ほどフランチャイズの加盟店をやってきただけの私が思うことです。
景気のよかったアベノミクスのころは、店の運営そのものに問題はありませんでした。 チラシを撒けば、注文がたくさん入ってきたからです。 ところがコロナ禍があり、ロシアとウクライナの戦争があり、アメリカとイランの戦争があり、 同じやり方のままでは通らないところまで、状況は大きく変わりつつあります。
知り合いのハウスメーカーの社長は、2026年にキャンペーンのチラシをやめて全戸にDMを送ったところ、 当日来たお客様は1組だったと話していました。とても印象に残っています。 私も新聞に広告を出して、反響が2件だったことがあります。 アベノミクスのころは、電話回線がパンクするほど電話が鳴っていたのにです。
もう一つ、状況を大きく変えているのが生成AIです。 その話は生成AIを使って、経費と手間を減らそうの章にまとめました。