不動産オーナーの実際
区分マンションを3部屋、サブリースで持っていました。 家賃保証つきで、手間もかからない。よくある入り方です。 最終的には売り抜けて次に進めましたが、それは腕ではなく、たまたまでした。
毎月のキャッシュフローです。家賃から、返済・管理費・サブリース料を引いた後の額です。
| 部屋 | 月のキャッシュフロー |
|---|---|
| 1部屋目 | +1.2万円 |
| 2部屋目 | +0.4万円 |
| 3部屋目 | -1.6万円 |
| 合計 | ほぼ0円 |
3部屋持って、月に残るのはゼロです。しかも、これで終わりではありません。
毎月のキャッシュフローを計算するとき、家賃から引くのは返済・管理費・修繕積立金・サブリース料です。 固定資産税と都市計画税は、ここに出てきません。年に数回まとめて払うものだからです。
入れて計算し直すと、合計はマイナスになります。 つまり3部屋持って、毎年持ち出しでした。
月次の表だけを見ていると気づきません。月の収支は合っているのに、 年間で数えると赤字という状態が起きます。私はしばらく気づいていませんでした。
年に1回しか出ていかない費用は、月次の表から消えます。 これが「見えない数値」です。不動産に限らず、どの商売でも同じことが起きます。
賢い投資とは言えません。
1部屋目だけを見れば月1.2万円のプラスなので、そこだけ切り取れば 「毎月キャッシュが入ってきます」と言えます。実際、募集ではそういう見せ方をされます。 3部屋を合計した数字は、自分で計算するまで出てきません。
持っていた期間に分かったことを、4つ書きます。
家賃保証の対価です。空室でも入ってくる代わりに、毎月1割が引かれ続けます。 入居が安定している部屋ほど、払っている保険料が割高になります。
これが一番こたえました。区分でサブリースだと、手を入れる権限が自分にありません。
私は建具の張替えを本業にしています。畳も襖も障子も、自分で張れます。 それでも自分の持ち物に自分で手を入れられない。 価値を足す手段を持っているのに、使えない状態でした。
家賃は上がりませんが、管理費と修繕積立金は上がります。 築年数が進むほど上がるので、持っているだけで手取りが減っていきます。 上の3部屋目がマイナスなのも、ここが効いています。
いちばん深刻だったのはこれです。市場価格が10年近く、買った値段を下回っていました。
売れば損が確定します。持っていても月ゼロ円。 やめることも、続けて増やすこともできない状態が、10年近く続きました。
毎月の収支より、出口があるかどうかのほうが効く。
状況が変わったのは、私が何かをしたからではありません。 アベノミクス以降のインフレで、中古の相場が上がっただけです。
買った値段より中古価格が高くなった時点で、全部売り切りました。 結果として利益は出ましたが、これは相場が来たから出た利益です。 腕でも、判断でもありません。来なければ、いまも持っていたはずです。
もし私がこの話を売り文句にするなら、こう言えます。 「サブリースで3部屋持ち、売却で利益を出しました」。嘘ではありません。
けれど中身は、月ゼロ円で10年近く塩漬け、相場が来たので脱出できたという話です。 同じことを今から始めて同じ結果になるかは、相場次第で、自分では決められません。
再現できないものを成功例として語ると、嘘になります。
売った資金で、次はこうしました。
| 項目 | サブリース時代 | いま |
|---|---|---|
| 物件の種類 | 区分マンション | 戸建て |
| 買い方 | ローン | 現金 |
| 運営 | サブリース会社 | 自分 |
| 家賃を決めるのは | 相手 | 自分 |
| リフォーム | できない | 自分でやる |
2件を現金で買い、うち1件はリフォームも現金でやりました。 借入がないので、空室になっても返済に追われません。持ち続ける判断が自分でできます。
そして戸建てなら、自分で直せます。本業の技術がそのまま使えるので、 外注すれば数十万かかる工事が、材料代だけで済みます。 これは他の人には真似のできない部分で、私が戸建てを選んだ一番の理由です。
別の記事で「小さく始めて、上流へ移る」と書きました。この持ち替えが、まさにそれです。
| 立場 | 誰が決めるか |
|---|---|
| サブリース | 家賃も入居者も相手が決める |
| 自分で貸す | 家賃も入居者も自分が決める |
| 自分で直して貸す | 物件の価値そのものを自分で上げられる |
持っていれば上流、ではありません。値段を自分で決められるかどうかが境目です。 サブリースは「オーナー」と呼ばれますが、実際に商売を回しているのは借り上げる側です。
そして下流から入ったこと自体は、間違いだったとは思っていません。 最初の1棟で、いきなり現金で戸建てを買えたわけではないからです。 下流で入って、出口で上流へ移った。順番としてはこれでよかったと考えています。
ただし出口が来たのは運です。そこだけは、他人に勧められません。
どれも、契約前に聞けば答えが返ってくることです。 聞いても出てこない数字があるなら、そこに理由があります。